くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

素晴らしい秘密の技術。その名は「貿易」。

自分の仕事を無断で中国に“アウトソーシング”していた従業員──Verizonが事例として紹介(IT media)

会社で最優秀と見なされていたソフトウェア開発担当者が、実は自分の仕事を中国企業に丸投げしていたことが、VPNのログ調査で発覚した──。米通信大手のVerizonが1月14日(現地時間)、2012年のケーススタディのこぼれ話としてこんなエピソードを紹介した。同社は企業向けにITコミュニケーションサービスを提供している。

米国のある重要インフラ企業に勤めていたこの開発者──Verizonは仮にボブとしている──は長年にわたって、自分の仕事を中国瀋陽市にあるコンサルティング企業に低価格でアウトソーシングし、自分は毎日会社に出勤して動画閲覧やFacebookで時間をつぶしていた。皮肉なことに、ボブの人事評価は非常に高く、この会社の最優秀開発者として10万ドル以上の年俸を得ていた。

 
この記事を読んだとき、クルーグマン先生の本で紹介されていたある寓話を思い出した。その寓話とは次のようなもの。

 ジェームズ・イングラムの貿易に関する教科書(1938年)には、素晴らしい寓話が収められている。ある起業家が秘密の技術を使って、アメリカの小麦や木材などを安くて質の高い消費財に替える事業を始めた。起業家は産業界の英雄として賞賛される。国内の競争相手の一部はこれで打撃を受けたが、自由市場経済では一時的な混乱は当然のことだとして、誰も問題にしない。しかし、ある記者が調査を進めた結果、起業家が実際には小麦や木材をアジアに売って、その代金で製品を買っているだけであることが分かった。起業家は詐欺師とされ、アメリカの雇用を奪ったと非難された・・・・・・。

 ここで重要な点はもちろん、貿易も他のものとは変わらない経済活動であり、輸出品を輸入品に替える製造過程の一種だと考えうることである。――クルーグマン『良い経済学 悪い経済学』p171-172より

 
 よく似ているでしょ?ボブさんがやったことは(制約条件下における自身の効用最大化問題の解決方法としては)なかなか賢いやり方だ。まあ、社会的には非難されるでしょうけど(笑)。

 ヨラム・バウマンのマクロ経済本にも「技術革新と貿易はほぼ同じ(見分けがつかない)」って書いてあったな。マンキュー先生もブログでこの事件を取り上げている(「The Gains from Trade」ってタイトルで事件記事のリンク張っているだけど)。

 やっぱり、経済学を学ぶと同じことを思い浮かべるようです(笑)