幸福度調査へのたたき台(「日本で一番幸せな県民」(坂本光司&幸福度指数研究会著)感想)(追記あり)
以前、こんなニュースが話題になりました。
全国“幸福度”ランク!1位・福井、最下位・大阪(ZAKZAK)
本書はこの調査を書籍化したものです。本書は4章立てで、第1章がGNPからGNHへと題し、GNH(国内総幸福)の必要性を説きます。第2章は全国幸福度ランキング、第3章が各都道府県別の解説、第4章が幸福度を高めるためにはどうしたら良いかが書かれています。ただし第1章と第4章の記述は少なめで、ほとんどがランキングと都道府県の解説で占められています。
本書は各都道府県の幸福度を測るために4つの部門を設定し、各部門で10の指標を用いて評価を行い幸福度を測っています。各部門と用いられた指標は以下の通り。
生活・家族部門
労働・企業部門
安全・安心部門
- 10万人当たり刑法犯認知件数
- 10万に当たり公害苦情件数
- 10万人当たり交通事故発生件数
- 10万人当たり出火件数
- 100万人延実労働時間当たり労働災害率
- 1人当たり地方債現在高
- 1世帯当たり負債現在高
- 1世帯当たり貯蓄現在高
- 65歳以上1当たり老人福祉費
- 手助けや見守りを要する者の率
- 悩みやストレスのある者の率
- 悩みやストレスを相談したいが誰にも相談できないでいる者の率
医療健康・健康部門
- 1日の休養・くつろぎ時間
- 1日の趣味・娯楽時間
- 1人当たり医療費
- 10万人当たり病院+診療所の病床数
- 10万人当たり医師数
- 10万人当たり老衰死亡者数
- 10万人自殺死亡者数
- 平均寿命(男)
- 平均寿命(女)
各所でツッコミどころがありそうですが、著者はその点も認めています*1 今後進みそうな幸福度研究のたたき台として眺めるのが良いかと思います。
経済関連の指標でツッコミどころは、(正社員)雇用に関する指標に偏りすぎているように感じます。給与(所得)が入ってないのも意外。まぁ、これは坂本光司先生が経営学者だからかもしれません。さらに、雇用に関して言えば、(正)社員の長期安定雇用を重視しているらしく*2、「有業者の平均継続就業期間」という指標も入っています。この指標は地方が長く、大都市(と沖縄)で低い結果が出ています。しかし、これはただちに都市部の人が転職を繰り返していることは意味しないでしょう。都市部にはベンチャー企業が多く誕生しており、これが平均継続就業期間を押し下げていると考えられます。つまり、都市部の方が経済の新陳代謝が活発であるとも考えられるのです*3。
追記(2011/12/10 6:30)
ふと、以前書いたエントリーで紹介した、ティム・ハーフォード先生による幸せになる方法を思い出した。その部分を引用。
(リチャード・レイヤード)教授の結論は「ある程度まではお金で幸せは買えるが、離婚や失業はつらい」という、一見すると当たり前のものです。
この洞察から導かれる助言は単純明快です。第一に、結婚生活の危機を招くようなキャリア選択をしてはなりません。第二に、給料は低くても安定した仕事につくと、給料は高いが不安定な仕事につくより、幸福度は高くなります。
この結果によると、(たとえ給料が安くとも)長期安定雇用の方が幸福度に寄与すると言うことになる。よって坂本先生のように長期安定雇用を重視するのも一理あると言えます。
追記終わり
あと、地方債現在高も入っているのもどうかなぁ。普通そんなこと気にして(消費)活動しないよ(笑)
本書はランキングで一喜一憂するのではなく、各都道府県の強みと弱みを知るのに最適な1冊だと思います。たとえば第3章の岡山県の解説を読むと、医療・健康部門に最高の評価を与えられている一方、交通事故と出火が多い*4。という結果になっており、岡山県人は運転マナーが悪いという風説を証明するものとなっています(笑).
これで1,000円は安い(と、思う)。
おまけに、いま話題の大阪府の評価を貼って終わりにします。
全部門で平均以下。なるほど、大阪府民が「維新」を期待するのもうなずける気がするorz
- 作者: 坂本光司&幸福度指数研究会
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/11/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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