くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

消費税増税にしか触れない日本のメディア

IMF、消費税増税など税制改革の必要性指摘(読売オンライン)

 国際通貨基金IMF)は8日、日本経済に関する訪日調査を終えて声明を発表し、日本の財政再建策について、「歳出削減の余地が限られる中、段階的な消費増税を中心とした包括的な税制改革によるべきだ」と指摘した。

具体策として、消費税率を2012年度から7〜8%に引き上げる案を示した。

声明は、政府の社会保障と税の一体改革などの取り組みを評価しつつも、財政再建には不十分であると主張した。

 消費税を今後10年間で15%まで段階的に引き上げるのに加え、所得税の課税対象拡大や社会保障費以外の歳出抑制などを実施すれば、法人税率を5%引き下げても、健全性の目安となる基礎的財政収支を対国内総生産(GDP)で10%改善できるとの試算も公表した。

 日本の報道をざっとチェックしてみましたが、ほとんどのメディアが財政再建(消費税増税)にしか触れていません*1IMFのサイトには丁寧に日本語で書かれたプレスリリースがあるので確認してみましょう。

IMF代表団、2011年対日4条協議を終了(IMF)*pdfファイルです

 財政への信頼を維持するための公的債務の削減には、より意欲的な中期戦略が必要。歳出削減の余地が限られているなか、財政健全化戦略は、漸進的な消費増税を中心とした包括的な税制改革によるべき。プライマリー・バランス黒字や債務水準のターゲットを明示した財政ルールを採用することは、財政健全化の持続と信頼性の向上に資するであろう。

 日本銀行による緩和的な金融政策スタンスは、金融市場の安定化にも貢献した。総合インフレ率は上昇してきているが、低調な需要及び非常に不確実な見通しはデフレ圧力を増すおそれがある。日本銀行の資産買入プログラムの加速・拡大は、デフレリスクに対抗するとともに、景気回復を支えうる。価格変動の激しい時期にコミュニケーションを強化するため、日本銀行は、政策スタンスを伝えるにあたって食品とエネルギーを除くインフレ率の見通しについてより説明することも考えられる。

 金融行政は、景気減速と金融市場の不安定化のリスクに対処すべき。景気回復の遅れは、とりわけ小規模な企業に対する銀行の与信コストを引き上げうる。銀行は同時に多額の株式及び国債保有に関わるリスクにも直面している。金融システムの強靭性を強化するために、監督当局は、脆弱な銀行に対して、資本基盤の強化及び困難な状況にある借り手に対する早めの対応を促すべき。来年行われる金融セクター評価プログラム(FSAP)アップデートは、金融の安定や金融仲介の改善に関する様々な課題、及び新たなグローバルな規制措置の影響を吟味する機会となろう。

 政府の成長戦略の時宜を得た実施は、財政健全化と景気回復を支えることにもなろう。女性、若年者及び高齢者の雇用の機会を拡大するとともに、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などを通じた更なる地域間の貿易統合の推進により生産性を向上させることが重要課題である。TPP は、新たな輸出市場を切り拓くとともに、サービス・農業セクターの改革を加速しうる。

 消費税増税だけでなく、日本銀行の金融政策、金融行政(これは金融庁の管轄か?)、政府の成長戦略――雇用改革、TPPへの参加要請――等々、日本に対して幅広い分野で注文をつけているのが分かります。

 なんで日本のメディアは消費税増税しか取り上げないのだろう。IMFのサイトに行けば日本語のプレリリースが読める。確認する手間はほとんどかからないはずなのにね。

*1:ちなみにブルームバーグ記事財政再建以外にもちゃんと触れていてかなりまともな記事