くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

「デフレと円高の何が「悪」か」(上念司著)を読みました

 はじめに
 気づけば、バブル崩壊からすでに20年。この20年間にあったことといえば、大蔵省の官僚がノーパンしゃぶしゃぶで接待受けたり*1山一証券が破綻したり、ITバブルがおこったり、女子高生ブームが起こったり、少年犯罪報道が過熱したり、日本の首相だって(おそらく多くの人が覚えていないほど)変わった。そして私も当時6歳からいつの間にか26歳(もう1ヶ月で27歳)になった。この20年間、本当にいろいろ出来事があったんだけど、この20年間ほとんど変わらなかったことがある。それは、日本のマクロ経済の停滞だ。

[世] 名目GDPの推移(日本)

[世] GDPデフレーターの推移(日本)
 
 もちろん政府は、バブル崩壊後からいろいろな政策を打ちました。地域振興券定率減税他種々の減税、もちろん財政政策(つまり公共投資ですな)もやった。それと消費税増税も(あ、こりゃ景気対策じゃねーやw) 。それでも、上記の名目GDPのグラフをご覧の通りほとんど増えていない。いったいどーしてなの!?

 この状態を説明するために、これまたたくさんの人たちが様々なことを言っています。曰く「日本人の生産性が落ちたのだから、構造改革で生産性を上昇させる必要がある」、曰く「財政政策が足りない」等々。そうした中で、ポールクルーグマンというアメリカの経済学者が、1997年ぐらいに「日本がはまった罠」という文章を発表しました。この文章曰く、「日本は流動性の罠にはまっている。よって通常の金融政策では、デフレを脱却できない。だから中央銀行が責任ある形でインフレ(期待)を起こそう!」。この文章は、特に(2000年当初から日本に普及しつつあった)ネット界隈で流行しました(当時この論の拠点としては、黒木掲示板苺掲示板が有名だ)。そして、ネット上に「リフレ派(昔はインタゲ派と呼ばれていた)」という一大(?)勢力を築くまでになっています。本書「デフレと円高の何が「悪」か」は、そうした「リフレ派」の主張を分かり安くまとめて、解説している本です。

目次

第1章 デフレと円高は恐ろしい−生活に与える諸影響
第2章 物価の動きをチェックせよ−デフレが進んだわけ
第3章 日本に無税国家が誕生する?−金融政策と金利のメカニズム
第4章 金ならある、心配するな−財政と財源を考え直す
第5章 歴史は繰り返す−昭和恐慌から学べ
第6章 やるべきことは何か−具体的な財政を実行せよ


 第1章から3章までが、デフレ現象、デフレに関して陥りやすい誤解、中央銀行の役割にいついて説明がなされています。第4章では、今でも盛んな日本の財政赤字(財政破綻論)について解説。まあ、この話題2000年頃からずっと続いているよね。2000年頃には「ネヴァダレポート」という出所不明の怪文書*2が、ネット上で騒がれていたなあ。直近だと、ギリシャの財政危機か。またぞろ財政破綻論者が元気になるだろうなあ(ため息)。大蔵じゃなかった財務省は笑いが止まらないだろうな。本書は、もちろん日本財政破綻論に与していません。財政赤字は問題だけど、言われているほど大きくないし、ましてや今すぐ破綻することは考えられない。財政赤字を減らすには、まず経済成長をしよう!(そのためにはデフレ脱却が不可欠)という立場。第5章は歴史から見るリフレ論。舞台は、なんと約80年前の日本!第6章は具体的な政策提言部分。5つの政策が提言されています。

終わりに
 新書サイズでページ数は後書き混みで220ページほどと、リフレ論を概観するには最適な本だと思います(もちろんお値段も740円と財布にも優しい)。逆に、すでにリフレ論を知っている人には、既知の内容ばかりで物足りなさを感じるかもしれません。ただ、リフレ論を復習するときにも使えると思うので、リフレ論を知っている方も手元に置いておくといいかもしれません。

*1:もう許して(ry 多感な時期に起こった事件だからよく覚えてる(笑)

*2:どういう内容が知りたければこちらをご覧下さい。