日本の家計もガソリン価格の動向から物価を予測してるみたい
ジェームズ・ハミルトン「インフレ率はなぜフィリップス曲線よりも高い?」(経済学101)
ジェームズ・ハミルトン先生の論説を読みました。要点をまとめると、
- 家計の予測(期待)インフレ率は専門家の予測や物価連動債によって求められる予測インフレ率ブレーク・イーブン・インフレ率)より高めになっている。
- 家計の予測(期待)インフレ率は原油価格の動向に影響を受けている。
- 家計の期待インフレ率の上振れによって、FRBのさらなる積極的な金融政策はやりにくいのではないか?
と、まとめられると思います。
さて、日本では日本銀行が「生活意識に関するアンケート調査」を行っています。これは3ヶ月毎に「景況感」や「暮らし向き」、「物価の見通し」などを生活者(国民)聞いている調査で、このなかに「1年前と比べて物価はどれくらい上がったか?」、「1年後の物価の見通し」、「5年後の物価の見通し」という項目があります。さらに最新号(2013年9月調査)(*pdfファイルです)には、特別調査として「5年後の物価の見通しの根拠」も聞いています。該当する部分を引用。
1年前と比べて物価はどれくらい上がったと思うか?
1年後の物価の見通し(消費税の影響は除く)
5年後の物価の見通し(各年の見通し)(消費税の影響は除く)
現在の物価の実感に関する根拠
5年後の物価の見通しの根拠
日本でもガソリン価格や日常品の価格から将来の物価を見通していることが分かります。さらに、それはブレーク・イーブン・インフレ率(現在は1.5%ぐらいだっけ?)よりも高めになっている。
それでは、ジェームズ・ハミルトン先生が懸念しているように、日本でも家計の予測(期待)インフレ率によって、金融政策が制限を受けてしまうのでしょうか?
たしかに、さらなる積極的な金融緩和はやりにくいのかも?ただし、それなら目標とするターゲットを引き上げれば良いだけのように思うがなあ。まあ、日本はアメリカと違い、まだデフレ脱却中だ。日本の場合、安定的な物価目標を達成したあと、それでも経済が停滞するならば考えればいいような気がする。
いまのところ黒田総裁は家計の予測(期待)インフレ率もうまくコントロールしていると言えるでしょう。
おまけ
クルーグマンの「日本の期待インフレ率は下がっているかも」というエントリーに対して、Carola Binderさんが、本エントリで紹介した「生活意識に関するアンケート調査」を持ち出して「日本の家計の予測(期待)インフレ率は下がっていない」というエントリーを書いてます。こういうやりとりを見ると、吉川洋先生がつねづねおっしゃっていた「(期待インフレ率の上昇が大事だと言うが)問題はだれの期待インフレ率なのかだ」という言葉を思い出してしまいますね。
PPP and Japanese Inflation Expectations (Extremely Wonkish)
↑こちらがクルーグマン先生のエントリ
Abenomics and Japanese Inflation Expectations(Quantitative Ease)
↑こちらがクルーグマン先生のエントリーに反応したCarola Binderさんのエントリ