くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

小野善康先生のアベノミクス評


 
 経済セミナー最新号(2013年6・7月号)が届きました。今号のテーマは「経済学って、役に立つ?」。毎号おなじみの対談は、池田新介先生と小野善康先生。対談で小野善康先生がアベノミクスについて述べていたのでその部分を転載。対談収録日は2013年3月26日となっています。また、読みやすいように改行をおこなっています*1

小野 まず、現時点でアベノミクスが効いたということ自体、変だと思います。それは、政権が始まって2〜3週間で、円安になった株価が上がったと言っているからです。

 日銀総裁が代わったのもごく最近ですし、その間、前総裁がバンバン紙幣を発行することもなかった。それから、国土強靱化といってもまだ何もしてない。つまり、実際には何もやってないわけです。

(中略)

 何もやっていないのに効果が出ている。ここが重要です。つまり期待による効果だけで、実体が変わったわけではないのです。

(小野) そもそも長期不況のもとで、金融政策に実体面への効果があると言えば、それも疑問です。1990年代初頭から2005年までに、日銀は貨幣供給量を3倍増やしていますそれなのに効果は全くなかった。物価も上がらないしGDPも上がらなかった。つまり、過去の経験から、金融緩和をしても効果がないことは目に見えている。

 それでも  安倍首相は、インフレ率2%を達成するまでは何でもやるよう、日銀に強く圧力をかけています。日銀はその達成を約束しましたが、実体面で何らかの対策を打たないかぎり、とても達成できるとは思えません。

 これについて、期待によって現状がよくなっていればそれでいいのではないか、と考えている人もいるかもしれません。しかし、期待だけで経済がよくなるためには、背後で何らかの実体面が動いていないと続かないのです。

 つまり、技術が変わったり、人々の選好が変わったり、外生的に需要を増やしたりしなければ、経済の均衡状態は変わりません。期待だけをあおり、人々が新たな期待のもとで行動を変えたところで、実体面が変わっていなければ、期待は失望に変わります。つまり、それでは均衡状態ではないと言うことです。そのため、元に戻ってしまいます。

 このような均衡の話に対して、複数均衡の議論を展開する人がいます。これは、経済に「良い均衡」と「悪い均衡」という形で均衡が2つあって、日本は悪い均衡にとどまり続けている、という議論です。それで、良い均衡へとジャンプさせるための大胆な政策が必要だというわけです。

 本当に複数均衡があるのか、という点についてはきちんと検証しなければいけませんが私は非常に懐疑的です。この20年間、日本経済には多くの揺さぶりがありました。

(中略)

 いずれの場合も、実体面が元に戻るにつれて、以前からの不況状態に戻っています。だから複数均衡ではなく、現在の状態しかないと思っています。

 繰り返しになりますが、ここからいえることは、期待をあおるだけで何もやっていないのなら、遅かれ早かれ元の状態戻ると考えるのが自然だということです。


以下、クルーグマンの「It's Baaack?」論文の話題に移る。「It's Baaack?」論文の疑問点を述べたあとの小野先生の発言。

(小野) クルーグマンモデルをきっかけにインフレターゲット政策が注目を浴びていますが、もしもインフレを起こすことができたなら景気はよくなる、私もそう思います。だから、そういう点では私はインフレターゲット論者ですが、問題はどうやって起こすかです。

 将来、完全雇用に戻る見通しがない長期不況の状態なら、金融緩和をしても効果はありません。だからこそ、政府が財政で需要と雇用を作って、実体面を変えていく必要があるのです。

 需要を継続的に作れば労働の需給ギャップが減少しますから、デフレは止まります。これが一番確実ですし、余っていた労働力を雇用するので、それ自体、経済にとってプラスです。その上、実体面の変化でもっと景気のよい状態に確実に移っていきます。

池田 そういう点では、政府の国土強靱化計画はいいわけですね。

小野 そうです。理にかなっていると思います。ただ、国土強靱化でなくても、エネルギー政策や介護・保育政策でもよいわけです。継続的な雇用を作るという意味では、エネルギーや介護・保育の方がいいかもしれません。

池田 しかし、政策を行うための財源はどうするのですか。消費税ですか。

小野 消費税でも所得税でも、どちらでもかまわないと思います。


以下、円安、成長戦略、社会保障と話は続いていくが割愛。



 小野先生もインタゲ論者だったか(驚愕) 金融政策は実体経済への経路(パス)が不明瞭だから財政でいこう!という考えなのね。しかし、財政拡大は分かったが、そのときの金融政策はどうすればいいのかは述べてないな。「金融緩和は効果ない」と述べているので、金融引き締めしても財政拡大で大丈夫と思っているのだろうか?

 もう面倒だから金融緩和アンド財政拡大のポリシーミックスでいこう(提案)

*1:小野先生の話ながいんだもん(笑)