くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

フランスの若者の方が厳しそう

少し前に、はてなアノニマスダイアリーで「フランスへ移住しよう」といったエントリがーアップされていました(エントリータイトルうろ覚え)。はてブでもホットエントリー入りしていて結構なブックマーク数を集めていたように記憶しています。そのエントリーを読んだとき、何ともいえないモヤモヤ感を抱いたのですが、先日、クーリエ・ジャポン7月号を購入したらThe Economistのフランス経済に関する記事がありました。その記事のタイトルは「フランス・モデル、万歳!?金融危機で再評価される理由」です。

 記事によると「フランス・モデル」は金融危機以前は、主に米、英からボロクソに批判されていたのですが*1金融危機で、米英と比較してダメージが少なかったため再評価されるようになっているそうです。

 この「フランス・モデル」の特徴は漠然としていてまとめるのが大変らしいのですが、The Economistは「平等主義に基づく手厚い福祉」、「国主導の計画経済(コルベール的計画経済)」、「国による厳しい規制」の3つを「フランス・モデル」の特徴としてあげています。こういった特徴が不況の防波堤となり、他国と比較して金融危機のダメージが少なく、安定した社会になっている理由らしいです。

 一見良さそうな「フランス・モデル」ですが、The Economistは、最後の部分でこのモデルの欠陥を指摘します。少し長いですが最後の部分を引用してみましょう。

 こうしたことは、フランス・モデルが機能していることを意味するのだろうか。それともやはり、このモデルならではの欠陥があるのだろうか。その答えともいえるのが、成長率の低さや失業率の高さを示す、何とも"残念な"マクロ指標だ。このモデルの欠点は、国家が前述の3つの役割を担っている点から説明できる。

 国家が国民の必要最低限の生活を守るためには、医療と福祉を支えるために、雇用主に思い社会保障負担をかけることが必要。そのためフランスの企業は、雇用の創出を避けるようになる。インターン派遣社員を使い回している場合も多い
(中略)
 ようするに、フランスの労働市場は二分されているのだ。一方は、申し分ない給与をもらえる正規雇用の市場。(中略)もう一方は、保護されていない短期雇用の市場だ。仕事に全くありつけない場合もある。とくに若者は労働市場から閉め出されており、25歳以下の失業率は21%という高さだ。イスラム教徒が多い都市近郊では、若者の失業率がその倍まで跳ね上がる。

 フランス政府の国家計画にも欠陥はある。同国の産業構造は変わってきており、今や鉄道や自動車の開発を支えすればいい、というわけではない。(中略)それにフランスはベンチャー企業が少なく、中小企業も成長できない。パリ証券取引所に上場している企業の多くは、創業50年以上だ。
(中略)
 確かに、国家による規制はフランス経済を金融危機から守ったかもしれない。だがこれも裏を返せば、好景気になったところで、経済が活性化しないことを意味する。不況で安定している経済は、好況でも活力がなく、ダイナミズムに欠ける。 

そして、最期はこの文章でしめられています

フランス・モデルには長所も多いが、弾力性に欠けている。そのため、社会の連帯は守ることができるが、社会を長期的に支える、活力ある経済成長をもたらすことはないのである。

 うーむ、フランスって若年失業率がめちゃくちゃ高いんだな*2。これって、正規雇用の生活を守るために若者が犠牲になっているってことだよね。どこの国も若者が犠牲になるのかorz

 でも、フランスの若年失業率の高さは「構造問題」だとおもうけど、日本の場合は、単に景気の問題という気がする。だって、日本は、フランスほど福祉は手厚くないし、計画経済でもないし、規制も少ないからね。というわけで、フランスへ移住するよりも、日本で景気対策に本気で取り組む政治家なり、政党を応援した方がいいと思う。問題は、景気対策に本気で取り組む政党が見あたらないということだけどorz それに、仮にそういった政党が勢力を持っても、日本には世界最恐のインフレファイターがいるからなぁ。今度はいつ好景気になるかな……

*1:そういえばクルーグマンの「グローバル経済を動かす愚かな人々」の中にもフランスを批判する文章が載っていましたね

*2:現在、日本の24歳以下の失業率が約11%なのでその2倍