くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

クルーグマンミクロ経済学 第22章「情報・情報財・ネットワーク外部性」要約 第1節

本エントリーはクルーグマンミクロ経済学 第22章「情報・情報財・ネットワーク外部性」の要約です。
第1節 情報財の経済学
情報財とは物的な性質ではなくてそれに体現されている情報で価値が決まる財。
わたしたちの社会は、まだ伝統的な財の生産を多くしているが、情報財の生産も増え、その重要性も年々高まっている。そして情報財は、市場経済に新しい問題を突きつけた。
1.1 情報財の生産と販売
情報財の費用構造は高い固定費用非常低い限界費用(追加的費用)。
これは第14章で分析した自然独占と同じような費用構造を持っている。

1.2情報財の価格設定問題
情報財の生産は、標準的な独占の理論で説明できる。では、情報財は他の財とどこが違うのだろう?

それはファイル交換ソフト問題を使って明らかにできる。ファイル交換ソフトを使って、フィル交換ソフトの利用者は無料で情報財(たとえばCDやゲーム)を手に入れることができるとしよう。これは経済学的には良いことなのだろうか?悪いことなのだろうか?

それは、情報財の生産者が無料で利用する客がいることを知っていても情報財を生産するかどうかにかかっている。

もし、情報財の生産者が無料で利用する客がいることを承知で情報財の生産を続けるなら、ファイル交換ソフトの利用は総余剰(要約者注:消費者余剰と生産者余剰をあわせた社会全体の便益のこと)の増加をもたらす。

これは第20章で取り上げた人為的な希少財のような財の分析と基本的に同じ。このような財の場合、消費者が支払う価格をゼロにするのが一番効率的。

しかし、多くの人が無料で利用すると知っていたら情報財の生産者は情報財を生産しないかもしれない。これは消費者、生産者とも損をすることになる。よって情報財を生産者に生産させるためには、(一時的にでも)独占利潤が得られるという期待が必要。

情報財については一時的な独占が進歩の代償として必要とされるのが、経済学者の一般的な考え。

1.3 情報の財産権
一時的な独占を許す方法として、特許(Patent)著作権(Copyright)がある。

イノベーションは多様でありあるイノベーションに対して、特許や著作権が与えられない場合がある(例えば、既知のアイデアの組み合わせで新しいイノベーションを起こした場合)が、こういった場合でも競合企業に対する「先発者」優位によって、独占利潤を得ることができる(特にネットワーク外部性がある場合これはかなり強力に現れる)。

このような「先発者」優位も(著作権や特許のように)一時的にしか独占利潤を得られない。理由は2つ。1つは最終的にはそのイノベーションを競合会社が、マネするから。もう1つは別のイノベーションが、既存のイノベーションを時代遅れにするから。