くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

かみ合ってないように見える

 昨日Twitter某所であった実質賃金を巡るやりとりを眺めていたら、どうもかみ合ってない感じがしたのでここにメモ。

 まずは実質賃金の定義をしましょう。実質賃金は名目賃金を物価指数(消費者物価指数GDPデフレーターなど)で調整したものです。式で表すとこうなります。

 
 実質賃金=名目賃金/物価指数(消費者物価指数GDPデフレーターなど)


 ここから、実質賃金を下げるためにはふたつの方法があることがわかります。ひとつは(物価指数を一定として)名目賃金を切り下げる。もうひとつは(名目賃金を一定として)物価指数を上昇させる。


 普通リフレ派は名目賃金は硬直的である(あまり変化しない)という仮定をおきます。そこでリフレ派は「実質賃金を下げるためには(名目賃金を切り下げではなく)物価指数を上昇させよう」と主張します。なぜ名目賃金の引き下げを主張しないかというと、名目賃金の引き下げは「痛み」を伴うからです。「名目賃金切り下げという『痛み』を伴わずとも物価を調節することによっても実質賃金は調整できますよ」と言うのがリフレ派の主張なのです。

 次に実質賃金の引き下げに反対する人々の言説を読んでみましょう。読んでみると分かるんだけど、彼らは「名目賃金の引き下げによる実質賃金引き下げ」について反対してるんですね。うん、それについては私も反対ですよ。なんだ、対立点なんてないじゃないか。よかった、よかった……なんであんなにこじれてるんだろう?

おまけ
なんで実質賃金を下げようとするの?
 失業を下げたいのです。(クルーグマン先生にボロクソに批判されてる)ロバート・バロー先生の『マクロ経済学』にケインジアンモデルがのっていたので転載。


  • wは名目賃金率(硬直的)
  • Pは物価(財市場は伸縮的)
  • w/Pは実質賃金率
  • Lは労働量

 名目賃金率(w')は市場均衡の名目賃金率(w*)より上なので実質賃金率(w/P)'は市場均衡の実質賃金率(w/P)*を上回っている。ここで貨幣を増やすと価格(P)が上昇するので、実質賃金率(w/P)'は下がって、労働量(L)は増える。生産関数によって、労働量が増えれば実質GDP(Y)は増える。