くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

機械的に差し引いて判断するのね

 約1週間遅れの黒田総裁記者会見ネタ。

 先週の月・火曜日に金融政策決定会合が行われました。結果は「現状維持」。会合後の黒田総裁の記者会見の要旨が日銀にアップされていますが呼んでいて気になった点を2点ほど。

総裁定例記者会見(2014年3月11日)要旨(日本銀行) *pdfファイルです

 来月から消費税が増税されますが、増税の影響分だけ消費者物価が上昇してしまいます。「増税後に物価の動向に変化はあるか」という記者の質問に対しての黒田総裁の答えは、



 4月は1.7%、それ以降は2%差し引いて動向を見ていくそうです。ということは、来年はコアCPIで4%ほどの上昇を見込んでいると思っていいのかな?

 もうひとつは、最近の労働市場について、



 失業は、

  • 循環的失業(景気が悪化したときに生じる失業)
  • 構造的失業(経済構造やその変化によって生じる失業)
  • 摩擦的失業(転職や職探しによって生じる失業)

に分類できます。

 一般的に財政政策や金融政策で減らせる失業は循環的失業です。2014年2月の完全失業率は3.7%でした。黒田総裁は構造的失業率を3.5%程度と認識しているみたいなので、循環的失業はほぼ解消したとみているみたいです。構造的失業がどの程度の水準にあるかは議論のあるところですが*1、経済が悪化しないかぎり黒田総裁はこれ以上積極的な金融緩和はしないのかなと思ったり。

 最近の労働市場(と賃金)について伊藤忠経済研究所がレポートを出しています。こちらも循環的失業がほぼ解消して労働市場の需給が逼迫していることを述べています(そして非正規労働者の賃金が上昇に転じていることも)。

労働需給の逼迫が賃金に及ぼす影響(伊藤忠経済研究所)*pdfファイルです


 この状態が長く続くことによって「非正規労働者の賃金上昇→正規労働者の賃金と非正規労働者の賃金格差縮小→企業の正規労働者に対する需要回復→正規労働者の賃金上昇」というステップが進むはずなんだけど、来月の消費税増税がなあ。せめて1年延ばせれば良かったのになあ。まあ、予想以上に落ち込んだ場合、政府や日銀は「躊躇なく動く」といっているし、もうこの段階だと政府や日銀を信じるしかないか(あと、「外部(海外)からの『幸運』」(by竹森俊平先生)も。)。

*1:構造的失業率の分析手法としては、失業率と欠員率を用いたUV分析があります。