今回一番良かった記事は、FTの「国債格下げも財政赤字も気にするな!日本経済をすくう「たったひとつの方法」」
著者は、Peter Tasker。全然知らない人だけど、注釈を見るとビル・エモットとの共著を出している人らしい。記事はまず次の書き出しから始まります。
1月27日、スタンダード・アンド・プアーズが日本国債の格下げをした。経済大国のあいだで国家債務危機を引き起こす、グローバルな信用危機のセカンドステージが始まろうとしている――。新任の経済財政担当大臣である与謝野馨は、そういう風に考えているようだ。
当然ながらPeter Tasker氏はこの見解に異議を唱えます。それがまたすばらしい。
日本は世界3位の経済大国であり、日本国債が暴落すれば、リーマンショックの3乗くらいの衝撃になるだろう。
しかし、このような予想図には重要な視点が抜け落ちている。ユーロ圏の周辺にある「浪費国家」とちがって、日本は完全にセルフファイナンスしている国だ。国家財政は赤字化もしれないが、資金力のある民間セクターには国内のニーズをまかなうに十分なキャッシュがあるし、生産高の約3%相当の資本を毎年輸出している。その結果、巨額の海外資産という貯蓄もある。
いま重要なのは、需要を縮小させる緊縮策ではなく、永続的な経済成長である。そのためには、金融・財政両面での刺激策と構造改革が必要になる。与謝野のいうように消費税引き上げを行えば、消費は冷え込むだろう。
そうなると1997年の再来だ。この年、消費税が引き上げられたのだが、消費者が財政健全化に歓喜して財布のヒモをゆるめるだろうと踏んだ大蔵省の目論見は見事に外れた。逆に酷い不況が到来して、税収が落ち込み、財政赤字がますます拡大したのだ。
そして次の文章で締められています。
日本は、このところたいした成績も残していない格付け会社なんかの見解など忘れてしまって、デフレ脱却に集中して取り組む必要がある。それこそ、与謝野のいう「ひどい夢」から覚める唯一の方法だ。
完璧です!
ひとつだけ残念なのが、こういったすばらしい記事がフィナンシャル・タイムズに載っていること。日本の新聞社でこういった文章を載せている所なんてほとんどない。どこをみても、「財政危機ダー」、「消費税増税で財政健全化ダー」といった文章ばかり。
日本のマスメディアの人たちは、自分の財布と国家の財布を混同するマヌケばかりなのだろうか?それともシェイブテイル日記にあるように財務省の「教育」がしっかりしているからだろうか?*1どちらにせよ読む必要性がほとんどないのは変わりないけど。
これ以外の記事だと韓国中央日報の「「インタビューには書面でお答えします」自分の口がない日本の政治リーダー」と言う記事が興味深かった。記事によると、いまの閣僚たちにインタビューを申し込んでも書面インタビューばかりだそうで。おそらく失言対策なんでしょうが、脱官僚を標榜しておきながら、官僚に依存している菅内閣の姿がここでも確認できます。
あとは、レーヴィットのFREAKONOMICSブログの翻訳が始まってた(先月号から)。今回のネタは、囚人を大量に釈放すると、犯罪率は増えるかどうかネタ。クルーグマン先生や山形浩生氏の文章も相変わらず面白い。