くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

「六年目のクラス会」(那須正幹著)感想


 良い作品*1を読むと、また別の良い作品を思い出す。というわけで、続けて感想を書くのは、那須正幹著「六年目のクラス会」です。この本はね。いつか感想を書こうと思っていたんですよ。「これもミステリーだ!」という意味を込めてね。ちょうどいい具合に似たような良作*2を読んだので勢いで感想を書きます。

 本書はたった26ページ。短編も短編*3。あらすじを書いちゃうと即ネタバレになっちゃいそうだから簡単に書くと、幼稚園を卒業して6年後にクラス会が開かれたんだけど、思い出話に花が咲くうちに……という話。

 著者の「那須正幹」という名前を見てピンと来た方もおられるかもしれない。そう著者は、「ズッコケ三人組シリーズ」でおなじみの那須正幹先生です。本書はその「ズッコケ三人組」を想像して読んだらびっくりするよ。私みたいに(笑)

 私も最初「ズッコケ三人組」の作者と言うことで、ほのぼの路線かなと思って読んでいたの。最初は本当に楽しいクラス会の描写が続くしね。それがなんと中盤からどんどん緊張感が高まってきて、そして一気にラストの展開に続く。本当に油断してたからラストの展開にはびっくりした。……勘のいい人はこの描写でどういった話か分かるよね。やっぱりネタバレせずに書くなんて無理だ(苦笑) 

 さて、本書のテーマはいじめだ。いや、「いじめ」と一括りにされるものではないな。どんなに無邪気な存在で、無邪気な理由から行った行為であってもその責任(罪)は一生ついて回る。しかも、その行為を止めずに傍観していた人も同罪だ。というのが本書のテーマだと私は思う。

 本書のすごいところは、そういったテーマを直接描かないところ。子供向けの本にはそういった本が多いじゃない。「いじめはいけません」、「みんな仲良くしましょう」といったテーマ(言葉)を直接書いちゃう。でも、こういった言葉は紋切り型の「説教」なんだ。

 子供は「説教」に敏感だ。そして「説教」が大嫌い*4。「説教」と認識された時点でそういった言葉はスルーされる。「ハイハイ。先生(親)がまた何か言ってるや」という風にね。

 本書は、そういったことを直接書いていない。ただただある物語を描写するだけだ。でも、この物語を最後まで読んだ人には、何かが残る。もちろんそれは大ざっぱにいうと「いじめはいけない」ということなんだけど。でも、そういった紋切り型の言葉じゃない何かが確実に残る。そしてそれが一番大事なことだと私は思う。

 筆力のない私が言えるのはここまで。いじめ対策にこの本を配るのが一番じゃないかしら。

*1:「スプリング・ハズ・カム」(梓崎優)のことね。

*2:しつこいけど「スプリング・ハズ・カム」(梓崎優)のことね。

*3:なんせ小学校6年生向けですから

*4:子供だけでなく誰だって嫌いだよね。