どんな経済学の問題も、最も基礎的なところでは個人の選択――何をすべきか、また何をしてはいけないかの選択にかかわっている。実際、選択に関係がなければ経済学ではないといってもよいほどだ。
クルーグマン ミクロ経済学 第1章「最初の原理」より
私たちは人生の大部分を悩んで過ごしている。そしてその悩みのほとんどは選択問題と言ってもいいでしょう。「俺はこのままでいいのか(もっと別の生き方をした方がいいのか)」、「あの人と結婚してもいいのかしら?(もっと素敵な人がいるかも)」等の人生を左右するような大きな悩みから、「休日の過ごし方」や「今日はどんな酒を飲むか」と、いう日常のささいな問題まで私たちは悩みまくっている。
さて、経済学という言葉を聞いて皆様はどういう印象を持つでしょうか?「金儲けの学問?」、「どうでもことばかり述べている屁理屈屋の集団が研究している学問?」。まあ、あまりいい印象を持っている人は少ないでしょう。
しかし、クルーグマン先生が述べているように、経済学とは個人の選択を研究をしている学問なのです!そうであるならこれほど人生相談に適した学問はないでしょう。
というわけで本書は世界中の悩める子羊たちの質問にたいして、「覆面経済学者」であるティム・ハーフォード先生が、経済学の理論を使って、ずばりと明快な答え導きだしている人生相談本です。
人生相談本と言うことで出てくる話題は、恋愛、仕事、学業、料理、娯楽、その他と、まぁだいたいこの辺りのカテゴリは万国共通だなという感じはします。
読んでていて思うのは、本当に経済学者はいろいろな研究をしているんだなぁということ。ティム・ハーフォード先生は、いろいろな研究や論文を持ち出して悩める子羊たちの質問に答えるんだけど。持ち出してくるやつが、「不倫の経済学」、「謝罪の経済学」、「放蕩息子の定理」、「クリスマスプレゼントの死荷重的損失、」等々、もう感心してしまいます。
イギリス人らしく答えに皮肉が効いていてとても面白く読めます。でも、相談への答えの中には、「それは相談者が望んだ答えじゃないと思うけどなぁ」という答えもあったり(笑)*1。
どの質問も見開き2ページで収まっているのでさっと読めます。訳もこなれていていい感じです*2。
- 作者: ティムハーフォード,遠藤真美
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2010/10/15
- メディア: 単行本
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補足その1
The Undercover Economistの訳語で「覆面経済学者」は語弊のある訳語ではないかという疑問の声もあるが*3、本エントリーでは書籍の記述に従いました。
補足その2
本書には類書があります。それは、ロバート・H・フランク著「日常の疑問を経済学で考える」。この本は山形浩生氏が書評を書いておられるので、そちらをご覧下さい。
あとがき
やっと書いたよ!「書く」と言って、半年ぐらいたつような気がするけど。気にしない(笑)。