週刊東洋経済別冊 デフレ完全解明を読みました
以前、池田信夫先生が取り上げていたので興味を持って買ってみました。
本書の良い点
最初の現状報道部分は良かった(全国 街角の叫びとかインフレ率より賃金下落の方が大きいよというグラフ)。
グラフや図表は鮮やかで分かりやすい。
後ろの方にあるここ20年間の「経済年表」は便利かも。
悪い点
駄目な解説が混じっている。例えばQ&Aデフレの基礎知識(P24〜)で、「日本はなぜデフレに陥ったのか?」という解説で、日本銀行の逆噴射に触れつつも、
近年のデフレは金融危機後の需要縮小とともに、構造的要因も指摘される。たとえば、新興国台頭とともに経済のグローバリゼーション(地球規模の関係性強化)の中で世界的な一物一価の流れが進展し、日本の物価に下方圧力が強まった。(引用者注 原文では赤字部分は黄色いマーカーで強調されている)
グローバルデフレ論!懐かしいなぁ。もうひとつ「Q5 過去にはデフレもあったのか?」という問いに対する解説文。ここでは昭和恐慌の歴史を振り返りつつ次のようにまとめています。
こうした20年代以降の顛末は、90年代以降の日本経済との共通点が多い。?株式、土地バブルの崩壊でデフレ不況が進化、?不良債権処理が先送りされ、症状悪化、?世界経済危機が重なり、構造改革が中途半端に終わったこと、などだ。(引用者注 原文では赤字部分は黄色いマーカーで強調されている)
うーん……
東洋経済の中の人はよく勉強してると思います。正しい部分もあるし。ただ、いろんな説をずらずら並べている印象を受けます。
さて池田信夫先生が引用した10人の専門家部分ですが、10人の専門家は次の通り(順不同・敬称略)
新聞、雑誌、テレビでよく名前を見かける方ばかりです。たしかに池田信夫先生がおっしゃるように、リフレ政策を主張しているのは岩田規久男先生だけですね*1。岩田先生が4%目標の導入を主張する一方で、伊藤隆敏先生が「デフレ脱却には5%程度を目指せば2%程度のインフレになるが、政治的に無理だろう」と慎重(現実?)姿勢なのが興味深かったり*2。
そうそう、P78にある日銀マンの本音というコラムが面白かった。日銀マン曰く「もちろん、注意深く政策運営しますが、ずっと、何をやっても叩かれ役できました。おそらく、これからもそうなのでしょう」。
うーん、中央銀行が叩かれるのは仕方ないんじゃない?FRBのバーナンキ議長なんてぼろくそ叩かれてるじゃん(笑)*3。そういった世論や、政治家に影響されないための「独立性」であり「高給」なんだしねぇ。
買う価値はあまりない
とまぁ、いろいろ感想を述べましたが、1冊980円という値段なので正直買う価値があるかというとあまりないなぁ。今は入門書が安く手に入るしね。