くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

2013年を振り返って

 2013年の経済関連の出来事を振り返るとき、一番大きな出来事はなんといっても3月21日の日本銀行執行部の新体制発足および4月4日の「質的・量的金融緩和」導入でしょう。正直言って1年前の今頃は、安倍首相がここまでやるとは思っていなかった。いままでの政権だって「デフレ脱却」は言っていたわけで「どこまで本気かねえ?」と思っていました。

 そう思っていたところ、1月22日に日銀が「インフレ目標2%の導入」宣言および政府との「デフレ脱却に関するアコード」締結を政府と共同で表明。さらに2月には白川総裁の1ヶ月前倒し辞任表明*1

 「あらら」と思っていたら、総裁人事で従来の日銀批判の急先鋒だった岩田規久男先生が副総裁に就任。そして4月4日の「質的・量的金融緩和」導入と、1年前では想像できなかった状況に。この間、わずか4ヶ月なんですよね。政治のすごさ(と恐ろしさ)を実感した1年でした*2

 さて、いくら自分が支持している政策でも結果が出ていなければいけません。その結果もいまのところ素晴らしいものです。GDPもプラスで推移し、緩やかに物価は上昇しているし、失業率も改善している。正直に言って、質的・量的金融緩和」導入時に、ここまで改善するとは思っていなかった。

 「金融政策にはラグ(遅れ)があるし、本格的な回復は来年だろう」と思っていました。今年はたいして改善せずに、ネットで「リフレ派大敗北www」、「やはりリフレ派は声の出るゴキブリだったwww」ぐらい言われるのは覚悟してた(笑)それがここまで改善するとはねえ。リフレ派の自分もびっくりしている。やはり「理屈の力」ってすごいんだな*3。  

 もちろん今年は財政政策もそれなりにだしている。どちらがより回復に寄与しているかは断言できない。これは将来の研究待ちでしょう。折衷的な見方として「拡張的な金融政策」と「拡張的な財政政策」のポリシーミックスは、いまの日本でも効果があるとは言えまるでしょう。

 だから、10月の消費税増税決断は残念な決断です。今回の景気回復局面は民間消費と公共投資が引っ張っている。これは外需中心だった小泉政権時の回復局面(輸出と民間設備投資が引っ張っていた)と違い、内需中心の景気回復と言えます。それなのに、消費税増税を決めてしまうなんて!自殺行為にしか思えない。もちろん1997年といまは違うので「歴史は繰り返さない」かもしれないけど、不確実性が高まったのは間違いないでしょう。

 
 ちょっと話はずれるけど、最近の安倍首相の動き(特定秘密保護法を通す際の強引な議会運営や靖国神社参拝など)をみてると、「政治リソースを経済ではなくてそっちにつぎ込んじゃうのか……」と思ってしまう。
 「就任当時から安倍首相がそっち方面にリソースをつぎ込むのは分かっていたはずだ。だからリフレ派はバカなのだ。」という叱責が飛んできそうですが、それにしたってこんなに急ぐ理由が分からない。当分の間、国政選挙もないし、もっとゆっくり確実にやってくるものだと思っていた。まあ、逆に言えば隙ができたと言えるか。
 野党にもチャンスが?でも野党はマクロ経済政策がなあ。もっとマクロ経済政策に理解のある野党が増えれば良いのだけど。

 政治の話は荒れるし、エントリーの趣旨に反しますからこのあたりでやめて、まとめに入ろうっと。

 

 さて、今年はリフレ派にとって忘れられない年になるでしょう。日銀がリフレ政策を採用したのはもちろんですが、ここまで結果が出るとは思わなかった。もちろん、日本には解決しなければならない社会問題や構造があります。リフレ派も「インフレにすれば全部解決」とは思っていません。でも景気が上向いたのは事実です。その部分は素直に評価したいと思います。ベックワース先生も最近のエントリーで同じようなことを言っていたので引用*4。今年はベックワース先生の文章で締めましょう。

How is Abenomics Doing?(Macro and Other Market Musings)

This is great news for Japan. However, as Martin Wolf notes, this first arrow only addresses the cyclical portion of the Japanese economy. There are still huge structural problems that seem unlikely to be resolved anytime soon. Still, this is one big step forward for an economy burdened by malign deflation for the past few decades.

(拙訳)
 これは日本にとって素晴らしいニュースだ。けれども、マーティン・ウルフが指摘するように、第一の矢(大胆な金融政策)は日本経済の循環部分に向けたものに過ぎない。日本には解決が容易ではない構造問題が数多くある。でも、これは過去数十年間、悪性のデフレに苦しめられてきた日本経済にとって大きな一歩だ。


 それでは、よいお年をお迎えください。

*1:まあ、これは2008年にあった日銀総裁人事のゴタゴタで生じた総裁と副総裁の任期ずれを修正する意図があったのでしょう

*2:「恐ろしさ」の方は現在進行形で味わっているけどねorz

*3:こうかくと「リフレ派に理屈なんてあるのw」って嫌みが飛んできそう(笑)

*4:てっきり誰か訳して、経済学101に投稿すると思っていたけど、まだ誰も訳してない(´・ω・`)