須永朝彦編訳『江戸奇談怪談集』がおもしろい
先日購入した須永朝彦編訳『江戸奇談怪談集』がおもしろい。
本書は江戸時代に発行されたさまざまな書物からいわゆる「奇談」「怪談」のたぐいを集めたもの。私も『耳嚢』や『伽婢子』は知っていたけど、こんなにたくさんの本があったとはなあと、感心することしきり。
解説を含め580ページ以上あるのでまだ全部に目を通してないけど、怖い話よりも思わず笑ってしまう話が多いような気がする。物語の冒頭で井原西鶴先生が千人斬りを告白する話は最初から大笑いしてしまった(笑)*1。そこから始まる物語もすごいもので、精巧にできた(男の)人形が太夫(こちらも男)に恋をする話だったり。
あと、男に扮装している女の話や女に扮装している男(いまでいう男の娘)の話もあるし。もちろん(?)ふたなり話もあるぜ!
こうしてみると、現代とあまり変わらんような気がする。いまネットやオタク界隈で流行っている事象の源流は江戸時代にあるのかもね。
稲川淳二さんが言っていたけど、怪談・奇談が流行るのは世の中が安定しているときなんだって。こういうところにも江戸時代と現代の共通性を見るような気がする。
もちろん、このような話だけじゃなくて「牡丹灯籠」や「稲生物怪録(平田本)」などの有名どころも収録されているよ!*2
それと、附録の「夷歌百鬼夜狂(ひなうたひゃっきやきょう)」もおもしろかった。「夷歌百鬼夜狂」とはいわゆる「百物語」の狂歌バージョン。何人かが集まって100首狂歌を読む。もちろん1首読むごとに灯芯の火を消す。お題はすべて怪異に関するものばかり。そのなかでも私のお気に入りはこれ。
お題 雪女
白粉(おしろい)に優りて白き雪女いづれ化(け)しやうの者とこそ見れ (紀 定丸)
「化(け)しやう」の部分が「化粧」と「化生(化け物の意味)」の掛詞になってる。うまいねえ。
1冊1,700円+税と、決して安いものではありませんが、怪談・奇談好きなら1冊手元に置いておいて損はない本だと思います。