くじらのねむる場所@はてなブログ

岡山県南西部在住。1983年生まれの40歳。経済、ミステリ、ウイスキー等について細々とブログに書いています

アイスランドが経済危機から立ち直った理由

クーリエ・ジャポン8月号より。記事のタイトルは「私たちはこうして危機から立ち直った」(p64-65)。WSJの記事の翻訳です。

アイスランドには独自の通貨、中央銀行、金融政策があり、政策の選択肢があると言うことは、ユーロ圏諸国にとっては夢のような話だろう。アイスランドの立ち直りは、ユーロ圏諸国が通貨同盟に参加したときに何を手放したのかという教訓を鮮明に語っている。

 08年、アイスランドの金融と不動産バブルが崩壊し、失業者が急増した。政府は退陣し、国際通貨基金(IMF)が救済措置をとった。アイスランドの通貨「クローナ」は切り下げられ、価値は半分になった。外国製品の値上がりはインフレに火をつけ、消費者物価指数は08年以降で26%も上昇した。しかし切り下げのおかげで、水産業をはじめとする輸出が後押しされ、自動車など高価な製品の輸入が減った。

(中略)

 さらにアイスランドは、ギリシャやスペインを苦しめている緊縮政策の実行を遅らせた。最初はむしろ、最貧層の人々への社会福祉支出を拡大して彼らの継続的な消費を支えることで、ショックの緩和に成功したのである。

 最近までIMFアイスランド派遣国代表だったジェリー・コザックはこう話す。「アイスランドでは、戦略が全体として非常にうまく機能しました。個々の戦略がよかったというよりは、あらゆる要素が結びついて成功したと言うことです」


 

 不均衡を改善することは、ユーロ圏内では難しい。いわゆる「内的減価」*1という通貨の切り下げ政策がとられているが、それは各国民をより貧しくすることの婉曲表現に過ぎない。理論的には、賃金を下げることで外国の競合企業に対する輸出産業の競争力が増すことになる。だが実際には、国内経済に悪影響を与えることなく、減給を行うのは困難だ。

 ユーロ圏内で救済された国の成功例であるアイルランドでは、「内的減価」政策によって輸出産業の復活が促進されたが、その代償として失業者が増え、国内経済が低迷した。対照的にアイスランドでは、通貨の切り下げによって国民が輸入品の消費を減らさざるを得なくなり、国産品を買うようになった。

ギリシャ南欧を見ると、労働市場に影響する政策がいかに痛みを伴うものかわかる」と保守派の国会議員、トリッグヴィ・ソール・ヘルベルトソンは言う。
「通貨を通じて改善するほうが、痛みはずっと少ないのです」

 現在、1ドルは約129クローナ。破綻以前の07年に1ドルが60クローナ強だったから、クローナの価値は当時の約半分だ。つまり、水産物の輸出で稼ぐ同国の漁師はいま、同じ漁獲量で2倍のクローナを稼げる。インフレではあるが収入がそれを上回っている。

 (収益の改善により水産業者の投資が活発になったという記事に続き)一方、ヴェストマン諸島出身のスヴェイン・マグノソンは漁業をしながら育った。通貨が暴落してからは短時間で同じ収入を得ることができるようになり、船の調理係の仕事を別の人と分け合い、働く時間を半分に減らした。
「昨年、漁に出たのは123日間で、休業日が何日もあります」と彼は言う。彼はそうした時間を使って2人の娘と過ごし、近くの緑地で草を食べている羊の群れの世話をしている。

 

 一方、極東にある島国では「独自の通貨、中央銀行、金融政策」があるにもかかわらず、政府、国民一体となって「内的減価」に突き進んでいましたとさ・・・・・・

*1:名目為替レートが切り下げられないとき、国内の賃金や物価を大幅に圧縮することで、実質為替レートを下げるやり方