我が国に資源はないが、精神力という資源は無限にあるのであります
――不詳*1
精神論が嫌いな私はどうもこの手の言葉はうさんくさげに感じていたのですが、読んでみるとなかなか興味深かったです。
本書で言う意志力はさまざまな誘惑に惑わされずに行動する力――自己管理能力――のことです。これは目に見えないのでついつい無限にあると考えがちですが、筆者によると意志力は使えば使うほど減っていくそうです(これを自我消耗というらしい)。というわけで、意志力は無駄遣いせずに目標を絞って使いましょうとのこと。無限の精神力なんてなかったんや!
意志力の源はグルコース。よって、グルコースを取れば意志力は回復するのですが、砂糖などは瞬間的に血中グルコースの量を増やすものの、その後急激に減るので意志力が不安定になってしまう。それよりは、低GI食品をとった方がいい*2。あと、病気(軽い風邪でも)は免疫システムが大量にグルコースを消費するので意志力が弱ってしまう。だから病気になったら仕事を休んで寝たほうがいい。それと疲れたときもグルコースが減っている証拠なのでこれもさっさと寝ること等々。うーむ、なるほど。
後半は意志力の鍛え方の話題に重点が移っていきます。簡単な運動や意識を変えることで意志力は鍛えられる!意志力を維持するためには監視の目が必要。宗教は意志力を鍛える効果がある!アメリカの誉めて育てる教育法は意志力を鍛えない。意志力を鍛えたければ、アジアの教育法を学べ!(いわゆる管理教育ってやつね)
特に印象に残ったのは、宗教の役割と教育の話です。筆者によると、絶対的な第三者(=神様)に自分自身を監視させることによって意志力が鍛えられるそうな。これは日本だと世間の目ってことになるのかなあ?教育の話は、「日本の管理教育はダメだ!」という主張を聞かされて育った世代としてはちょっとショックな結果。あの「管理教育批判」はなんだったんだろう……
本書を読んでいて、むかし感想を書いた色川武大先生の『うらおもて人生禄』を思い出した。色川先生は運のコントロールの必要性を説いていたけど、あれは意志力に読みかえることもできる。あの本は意外と理にかなったことを書いていたのかもしれんなあ。